郵便配達はベルを鳴らさない

平均よりちょっとだけ多めに映画を観る人間の雑記

映画音楽と日々

ある冬の日、町中をのんびり歩いていると、灯油の巡回販売だかなんだか知らないが、どこからともなく物悲しい音色が流れてきた。
その音色がどういうメロディを形作っているかに気づくと、スクリューに巻き込まれて海から引き揚げられた死体が頭をよぎった。そう、『太陽がいっぱい*1である。

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親しみやすく明るい曲は他にいくらでもあるだろうに、なんでその曲採用した!? と思いながらその場を足早に去った。

ルネ・クレマン映画繋がりで言えば、小学校時代、放送委員をやっていたときのエピソードがある。
給食の時間に校内放送で好きな曲をかけられるのだが、放送室にあるCDのラインナップの中に『禁じられた遊び』なる曲目があるのを発見した。「禁じられた」のフレーズに、さては校内で流すには反逆的な曲なのだろうと勝手に空想を膨らませた私と同級生は、その日の当番で『禁じられた遊び』を流すことにした。
実際に流してみると、なんてことはないギター曲だった。拍子抜けした私だったが、それが映画の曲であることを知り、その映画の中身をしっかり観るまでには10年ほど待たなければならない。あの映画、特に結末がそこそこトラウマです。

そんなわけで、最近はふと聞くと「あー、あの映画の曲だな」と心当たりがある事が増えた。
たとえば旅番組や紀行系の番組でたまに流れる『八十日間世界一周』。時間との戦いをひしひしと感じる原作に反し、よくあれだけ優雅な旋律を生み出せたなと思う。
でも映画版で印象的な気球に乗る場面*2にはぴったりだと思うし、そもそも映画では途中でスペインで闘牛やりま~す! なんて寄り道イベントも用意されているのでロードムービー的空気にはよいのかもしれない。でもこれが流れると、いくら優雅な旅番組などを見ていても私の脳裏ではフィリアス・フォッグがロンドンの改革クラブを目指して全力疾走するさまがよぎる。

また最近は車の運転をすることが増えたので、ドライブ用のプレイリストに映画楽曲をたくさん入れている。ただあまりにも雑多な内容なので、『007』のテーマが流れてジェームズ・ボンドさながらの気分で運転することもあれば、『No Time To Die』でややしんみりすることもあり、『Danger Zone』でこのまま離陸してやるぜェー! なこともある。『ウエスト・サイド・ストーリー』なんか聞いた暁には運転席で踊りだすこと請け合いだ。情緒不安定にも程がある。情緒不安定ついでに、私の友人は自分で設定したプレイリストに聴き入りすぎて青信号で停車しかけたことがある。皆様もお気をつけあれ。

ちなみに『ゴッドファーザー』のテーマは車のエンジンを入れるときにあまり聞きたくないかもしれない、という気づきを得た。
まとまりのない文章になったが今回はこのあたりで〆ようと思う。よき映画音楽ライフを。

*1:そういえば、この前『ハワイの若大将』を観たときに若大将が金持ちのボンボンを旅先から呼び戻しに現地へ赴くという流れがあり「明るめな『太陽がいっぱい』じゃん」と思った

*2:原作では気球に乗らない。ヴェルヌの『気球に乗って2週間』へのオマージュ?