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平均よりちょっとだけ多めに映画を観る人間の雑記

アラン・ドロン追悼特集で観た作品たち①

アラン・ドロン追悼特集で観た作品について書いていく。ネタバレは当然のごとくあります。

今回書くのは『さらば友よ』『生きる歓び』『ビッグ・ガン』。

 

さらば友よ

アルジェリアから帰還した軍医のバランは広告会社の女から、横領した債券を会社の金庫に戻してほしいと依頼される。バランは金に匂いを嗅ぎつけたアメリカ人傭兵のプロップと共に、債券を戻すと同時に金を奪おうとして金庫を開くが、そこには何もなく…。

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アラン・ドロンチャールズ・ブロンソンの共演はだいぶ前に午後のロードショーで『レッドサン』で観たな~と思った(けっこう前なので記憶はおぼろげ)。

てっきりドロンとブロンソンがうっかり閉じ込められた部屋から脱出! で話が終わるのかと思っていたらそんなことはなかった。
何よりびっくりしたのは"ワーテルロー"こと医学生のドミニク・アウステルリッツが『禁じられた遊び』のポーレットだったこと*1
さらに言うとドロンとブロンソンの男の友情がメインだと思って観始めたし、もちろんそれはそうなのだろうが(ラストの煙草のシーンと「Yeah!」が良すぎる)、ドミニクと広告会社の女イザベルの関係性が個人的に気になった。車の中での「またお父さんとも一緒に暮らせる?」といった会話、旧知の仲なんだろうか。あっちはあっちでシスターフッドだとしたらめちゃくちゃいいと思います。

ちなみに『ブラックジャック』でチャールズ・ブロンソンを元ネタにしたらしきキャラクターが出てくる……と聞いたので確認したところ、たしかに「白い正義」回のギャングのボスがブロンソンっぽい見た目をしていた。ちなみに彼は「さらば友よ……」(元セリフはなぜかローマ字表記)という呟きを残して退場する。

 

生きる歓び

榊原郁恵の『アル・パシーノ+アラン・ドロン<あなた』という曲の「アラン・ドロンのふりなんかして甘い言葉ささやくけど」という歌詞を聴いて、「ドロンが甘い言葉を囁いているイメージ、個人的にはあんまり無いかもしれない」ということを考え*2、その翌日観たのがこの作品だった。
良い分量のあらすじが見つけられなかったので、私なりに要約するとこうなる。

除隊になったユリス(アラン・ドロン)は行く宛もなく、友人とともに黒シャツ党に入る。反体制分子の活動拠点を探る最中、立ち寄った印刷所で出会った娘に一目惚れをする。ユリスはそのまま印刷所に住み込みで手伝いをすることになる。印刷所を経営する一家は全員アナーキストであり、娘の気を引きたい彼はアナーキストになりすますが……。

ルネ・クレマン監督の作品というと『太陽がいっぱい』『禁じられた遊び』『居酒屋』『パリは燃えているか』など、個人的にはシリアス系・重め系のイメージが強かった。なので『生きる歓び』を観てラブコメの波動にひっくり返った。温度差で心の中のグッピーが死んだ。甘い言葉囁いてるな!? と思った。
屋根裏住みのおじいちゃん、仲悪そうな近所の床屋さん、黒シャツ党の怖そうな尋問官、異様に綺麗好きの印刷所の奥さん……とみんなキャラが立っていて楽しい。思いっきりシリアスに振れることもできそうな状況設定なのに、警察とのやり取りもやけに牧歌的である。
アラン・ドロンといえば悲劇的な役が多いし、そっちのイメージのほうが強いが、味変的な感じで楽しかったと思う。凱旋門の爆破とかはあんまり笑えないけど。

 

ビッグ・ガン

暗黒街から足を洗おうとした矢先、愛する妻子を殺された殺し屋の復讐を描く。監督は「続荒野の1ドル銀貨」のドゥッチョ・テッサリ、脚本はウーゴ・リベラトーレ、フランコ・ヴェルッチ、ロベルト・ガンドゥス、撮影はシルヴァーノ・イッポリティ、音楽はジャンニ・フェリオが各々担当。出演はアラン・ドロンリチャード・コンテ、カルラ・グラヴィーナ、ニコレッタ・マキャヴェッリ、マルク・ポレル、ロジェ・アナン、リノ・トロイージ、アントン・ディフリング、ウンベルト・オルシーニ、グイド・アルベルティなど。

ビッグ・ガン : 作品情報 - 映画.com

ゴッドファーザー』のバルジーニとドン・トマシーノにすごくそっくりな人がいるなと思ったら同じ俳優だった(リチャード・コンテコラード・ガイパ)。
敵が主人公を始末しようとして車に爆弾を仕掛けるものの妻(と子)を巻き添えにしてしまう……という展開もあいまって「『ゴッドファーザー』みたいな風味だな」という気持ちで観ていた。コルレオーネファミリーの三男坊であるアル・パチーノシチリア出身の凄腕殺し屋のアラン・ドロン……? と存在しないクロスオーバーが頭で構成されるがもちろんそんなものはない。

ちなみに帰宅後、「アラン・ドロンってマフィアというよりギャングのイメージ」「『ファミリーの掟が』『あいつは同郷だから』どうこう、みたいなのより、一匹狼や根無し草、彼の名前以外は誰も何も知らない……みたいな方がしっくり来る」と熱弁すると父親にほんそれ~(意訳)と言われた。父親いわく「その点アル・パチーノはそういうの(マフィア的なサムシング)似合うよな」。たぶん親子で『サムライ』と『ゴッドファーザー』が好きすぎる。

 

たぶんアラン・ドロン追悼特集で観た作品の話、③くらいまで行くような気がする。行かないかもしれないしもっと行くかもしれない。

 

*1:禁じられた遊び』のあの終わり方、ポーレットは雑踏に紛れてあのあとどうなってしまうのだろう……と暗い気持ちになりながら観終えたので、もちろん俳優と役はイコールではないけど成長した姿を見て安心した

*2:今考えると映画の役柄よりも『甘い囁き』からのイメージなのかもしれない