郵便配達はベルを鳴らさない

平均よりちょっとだけ多めに映画を観る人間の雑記

無限は弾きこなせない『海の上のピアニスト』感想

『午前十時の映画祭』なる映画特集がある。 1年単位でラインナップを組み、古今東西の映画を上映してくれるという極めてありがたい特集である。ちなみに2024年度の公式サイトはこちら。 asa10.eiga.com 私の父親も(世間の平均と比べたら)映画が好きなので、…

早川雪洲の命日に千倉へ行った

11月23日はなんの日?そう、全国民がこう答えるでありましょう。日本人ハリウッドスター・早川雪洲の命日であると……。今日って早川雪洲の命日だから祝日なんですよね。なんかよくわからん理由つけて誕生日(6月10日)も祝日にしませんか? 妄言はさておき、早…

ハラキリ、セッシュー・ハヤカワ! 新国立劇場オペラ『修道女アンジェリカ/子どもと魔法』

あなたは自分の好きな俳優が突然オペラの歌詞でハラキリを宣言されたことがありますか? 私はあります。 新国立劇場で10月に上演予定のオペラ『#子どもと魔法』。管弦楽の魔術師ラヴェルによる色彩豊かなファンタジーで、一人の少年の成長譚でもあります。ht…

早川雪洲初主演作『颱風』を観た ―国立映画アーカイブ

国立映画アーカイブ(NFAJ)にはだいぶお世話になっている。去年は東宝映画特集で『新しき土』の伊丹版を鑑賞して「うわファンク版と違う!」と盛り上がったし、『ゴジラ』で芹沢大助こと平田昭彦のカッコよさに気づいてしまった。 そんな中、NFAJにはいつもだ…

神戸映画資料館で早川雪洲作品を観てきた

" data-en-clipboard="true"> 神戸映画資料館で早川雪洲の出演作を3本観てきた。ブログのタイトルそのまますぎる。 " data-en-clipboard="true"> 次回プログラム②【国立映画アーカイブ所蔵 外国無声映画傑作選 vol.3】9月16日(土)13:30〜鶴子と雪洲 知ら…

人と時の移ろいやすさ 『さらば、我が愛/覇王別姫』感想

昔、大学で演劇分野の講義を取っていた。かといってそんなにガチガチに難しいものでもなく、入門編のような気楽なものだった。教授の軽妙な喋りと、豊富な映像資料をもとに、昔は雅楽や神事から現代はミュージカルまで幅広く取り扱う講義だった。 さて、そこ…

正気を犠牲にしたオデュッセウス 『ナチスに仕掛けたチェスゲーム』感想

ちょうど一年前の今頃、私はオリバー・マスッチなる俳優に熱を上げていた。詳細は以下である。 tochterdeskino.hatenablog.com さて、このときに私はオタクの嗜みとして彼のInstagramの投稿を片っ端からチェックしたのだが、なんだか面白そうな主演作を見か…

サイレントとトーキーの狭間 早川雪洲の英語は上手いのか

「日本人は英語が話せない」、実によく聞く話である。私も受験英語ならともかく、コミュニケーション手段としてはブロークンだ。な~~~にが世界共通語だよ とはいえ、英語という問題は何も日本人にばかり降りかかるものではない。他の非英語圏の人間もまた…

19世紀ヨーロッパ全部載せ『アンデッドガール・マーダーファルス』

最近読んだものについて書く。 bookclub.kodansha.co.jp 吸血鬼に人造人間、怪盗・人狼・切り裂き魔、そして名探偵。異形が蠢く十九世紀末のヨーロッパで、人類親和派の吸血鬼が、銀の杭に貫かれ惨殺された……!? 解決のために呼ばれたのは、人が忌避する"怪物…

最近観たもの『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』『ラストエンペラー』

近頃バタバタしていたのでとても久しぶりの更新になってしまった。社会人って本当に時間がない。働きながら趣味やその他生活を充実させている方々を尊敬するばかりである。 近頃観たものについてつらつら書く。 『エブリシング・エブリウェア・オール・アッ…

早川雪洲の容貌についてつらつらと書いた

私は日本人ハリウッドスター・早川雪洲が好きである。早川雪洲で卒業論文を執筆したくらいには好きである。 『チート』の早川雪洲。ご覧の通りとても美しいですね。 そんなわけで、彼に関する資料やら文献をぼちぼち当たった。早川雪洲が「美男子」であると…

ハリウッド、永遠の狂騒 『バビロン』感想

「セッシュウ・ハヤカワとその美しい妻ツル・アオキが住む素晴らしき城のような邸宅は、ハリウッドの映画村が地元紙の描写したような官能的なバビロンではないという事実を突きつけた」*1 『Night Life in Hollywood』(1922)の字幕のひとつである。 youtu.be…

私はまだ仮縫いが終わったばかり 『華麗なる闘い』感想

最近私が熱を上げている平田昭彦が出ていると知ったので観た。(ものすごく簡潔な成り行き)ソフト化されていない映画らしく(おかげで貼れそうな画像もちょうどよい紹介動画もない)、東宝~~~ソフト化するか東宝名画座で配信して~~~~~~ 清家隆子は、戸…

この世で確かなことが1つだけある、人は殺せる 『鎌倉殿の13人』感想

次の大河が始まる前に滑り込み感想。※『ゴッドファーザー』のネタバレがあります 『鎌倉殿の13人』が終わった。結構Twitterで話題になっていた気がするし、私の友人たちの視聴率もまあまあ高かった気がする。私もほぼ全話リアタイ視聴(壇ノ浦だけ見逃した)し…

三つ子の魂百まで? 劇場版『名探偵ホームズ』感想

本日、1月6日は誕生日である。そう、シャーロック・ホームズの!(諸説あり) 私はシャーロックホームズシリーズが大好きである。シャーロッキアンを名乗れるレベルでは到底ないが、原作は自宅に揃えてあるし、たいして読めないくせに英語版も置いてあるし、…

クロスオーバーってたいへんだ 『リーグ・オブ・レジェンド 時空を超えた戦い』感想

私はクロスオーバーという概念が大好きである。自分の好きな作品のキャラクター同士が同じ世界線に居るなんて一度で二度おいしい。一石二鳥。もう最高。ついでに言うと自分でクロスオーバーを空想するのも大好きである(最近思ったんだけど、初代ゴジラの芹沢…

60年代の光と闇『ラストナイト・イン・ソーホー』感想

あけましておめでとうございます。 今年の映画一発目は『ラストナイト・イン・ソーホー』だった。 Netflixで『クイーンズ・ギャンビット』を観て「主人公のエリザベスが素敵~!」と騒いでいたら、「その俳優(アニャ・テイラー=ジョイ)、私がこの前観た映画…

今年観た映画100本と総括のはずだった

今年のはじめに「1年で映画100本観る」という目標を立てた。無事に達成することができたので、ラインナップを列挙しつつ印象に残ったことについて述べていきたい。 セーラー服と機関銃 日本敗れず 風雲のチャイナ バンズラビリンス 戦場のメリークリスマス …

Netflix『ザ・クラウン』をS5まで完走した

Netflix『ザ・クラウン』は英国王室を題材にしたドラマである。エリザベス女王の即位周辺から物語は始まり、現在シーズン5でダイアナ妃とチャールズ皇太子が離婚するくだりまで話が進んでいる。 www.youtube.com なんとなくで見始め、シーズン2まで観てしば…

私の人生は私が決める 『スペンサー ダイアナの決意』感想

のっけから話が逸れるが、私はミュージカル『エリザベート』が好きである。バイエルンの公女としてのびのびと育ったエリザベートは、時の皇帝フランツ・ヨーゼフに嫁ぎ、伝統と規則に縛られたハプスブルクに馴染めず、自由を求めて流浪の旅を繰り返す。そん…

映画音楽と日々

ある冬の日、町中をのんびり歩いていると、灯油の巡回販売だかなんだか知らないが、どこからともなく物悲しい音色が流れてきた。その音色がどういうメロディを形作っているかに気づくと、スクリューに巻き込まれて海から引き揚げられた死体が頭をよぎった。…

アンナ・メイ・ウォンが25セント硬貨に

女優のアンナ・メイ・ウォンがアメリカの25セント硬貨に採用されるらしい。 www.bbc.com 「そもそもアンナ・メイ・ウォンって誰?」という向きがあろうと思われるので、今日は彼女について書こうと思う。 アンナ・メイ・ウォンは中国系初のハリウッドスター…

100年前のハリウッドスターな推しのMBTIが知りたい!

『MBTI』やら『16タイプ性格診断』というものをご存知だろうか。人間の性格を外向/内向、感覚/直感、思考/感情、判断/知覚という観点から16のタイプに分類する性格診断である。詳しくは以下のサイトにでも。 www.16personalities.com 私の周囲で今流行してお…

アメリカはいい国です 『ゴッドファーザー』はいい映画です

「『ゴッドファーザー』がいい映画なんて常識だろ」と言われそうなタイトルになった。私が映画を好きになったきっかけの話でも書こうと思います。 他の記事でも少し書いたが、私は幼少期から映画大好き人間だったわけではない。ハリー・ポッターやジブリ映画…

推しの吸血鬼役はオタク冥利なのか? Netflix『デイ・シフト』感想

私は「推しが吸血鬼を演じるのはオタク冥利」という思想の持ち主である。 吸血鬼はロマンに溢れる存在である。不老不死だし、いわゆる古典的な描き方の吸血鬼だとマントやらタキシードやらのかっちり系の服装(大好物)だし。吸血鬼が出てきがちな作品の舞台、…

ファンタビ3でネームドモブに落ちた話

※普通にネタバレがある 公開から数ヶ月が経つが、『ファンタスティックビースト』の最新作を観に行った。 作らせた残りのトランクどこ行った? とか 国際魔法使い連盟のリーダー選出って選挙じゃなくて麒麟のお辞儀なの? とか 神秘的な儀式ぜんぶ東洋でやれ…

変しい変しい私の変人 『青い山脈』感想

私が『青い山脈』なる映画を知ったのは10年ほど前のことである。 某携帯電話会社のCMで自転車を漕ぎながら、タレントと白い犬がメロディを楽しげな口ずさんでいる。それがなんの曲か考えることもしなかったが、当時まごうことなきおチビであった私はそのメロ…

新しき土とサムライの娘 『新しき土』日独版比較

『新しき土』(Die Tochter des Samurai/侍の娘)という映画がある。 ja.wikipedia.org ざっくりとしたストーリーを以下にまとめた。 輝雄(小杉勇)はドイツに留学したことをきっかけに日本の家族制度を始めとする慣習に反感を覚えるようになる。帰国途上の船で…

『ミツコ』と私の苦い思い出

ゲラン『ミツコ』は名香として知られる。 ジーン・ハーロウが愛用し、彼女の2番目の夫は拳銃自殺をする際に妻の『ミツコ』を浴びていたという有名な話がある。その他にも、この香水を好んだ著名人にはイングリッド・バーグマン、チャールズ・チャップリンの…

早川雪洲は本当に「セッシュウ」していたのか

私は映画俳優・早川雪洲が好きである。「誰?」と思った方はこの後のブログを読まないで彼のWikipediaでも読んでください。 ja.wikipedia.org そしてYoutubeで彼の出世作である『チート』でも観てください。 youtu.be ようは、早川雪洲という男は美形悪役と…