最近読んだものについて書く。
吸血鬼に人造人間、怪盗・人狼・切り裂き魔、そして名探偵。
異形が蠢く十九世紀末のヨーロッパで、人類親和派の吸血鬼が、銀の杭に貫かれ惨殺された……!? 解決のために呼ばれたのは、人が忌避する"怪物事件"専門の探偵・輪堂鴉夜と、奇妙な鳥籠を持つ男・真打津軽。彼らは残された手がかりや怪物故の特性から、推理を導き出す。
生首探偵・半人半鬼・メイドが体を取り戻すためヨーロッパを巡る
謎に満ちた悪夢のような笑劇(ファルス)……ここに開幕!
一言でいうと和製『リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン』(私は後述の映画版しか観たことないけど)といったような感じ。文学作品版アベンジャーズ的なやつである。シャーロック・ホームズ、アルセーヌ・ルパン、オペラ座の怪人、八十日間世界一周。それからフランケンシュタインの怪物(を模した怪物)、切り裂きジャック、アレイスター・クロウリーやらなんやら、19世紀ヨーロッパ全部載せか?
2023年6月現在、3巻まで出版されており、7月には次巻が出るらしい。予約した。
以下つらつら本の感想を述べていく。
ネタバレかもしれないが、
「めちゃくちゃエルキュール・ポアロっぽいな」と思うキャラクターや「これフー・マンチューだよな?」といった人物もちらほら。あとエポック紙の新聞記者も登場するのだが、「エポック紙って『オペラ座の怪人』原作でエリックの訃報が載った新聞じゃん」と思い至り、おそらく作者が想定していない箇所で情緒が破壊された。今後はどんなキャラクターが登場するのか楽しみである。
そして以前書いた記事(前述の『リーグ・オブ~』の映画版感想)↓でも触れたが、クロスオーバー作品には難しい点がある。それは「登場人物が多くなるがゆえに個々のキャラクターの描写が雑になってしまう場合がある」という点だ。
クロスオーバーってたいへんだ 『リーグ・オブ・レジェンド 時空を超えた戦い』感想 - 郵便配達はベルを鳴らさない
映画と小説なので同じ俎上に載せるのも違うと思うが、『アンデッドガール~』におけるキャラクター描写は今のところ「良い」なと思っている。
中でもホームズが別勢力の人間に対して、ワトソンへの「無能」呼ばわりを撤回するように主張する場面は読みながら拍手喝采した。そういう細かいところ~~~!!
ただでさえ登場人物が大量で、主人公たちや19世紀文学作品の人物のみならず、保険機構《ロイズ》や事件の関係者など入れ替わり立ち替わりなのによくぞ……。
個人的にはアルセーヌ・ルパンとファントムの怪盗怪人コンビが好き。彼らについてもそのうちもう少し掘り下げがあるといいな。期待。
ただし、何もかも原作や元ネタと同一というわけではない。
例えば、ホームズとワトソンはドイルの小説シリーズで描かれた彼らよりやや後年の設定らしい。そしてファントムはペルシャ出身設定らしいし20代のようだ*1。
あと私が一番設定に「?」が浮かんだのが、2巻に登場するフィリアス・フォッグ。ジュール・ヴェルヌ『八十日間世界一周』の主人公。彼がかの偉業を成し遂げて30年後ということで登場するのだが、傍にいるのは召使いのパスパルトゥー。あの、アウダ姫*2は……? と思いながら読み進めたがアの字も出てこなかった。このフォッグ氏、もしかして何らかの乱数調整でインドでサティーに遭遇しなかったタイプのフォッグ氏?世界一周RTA 何周なさいました?? と頭が混乱した。いやでもエルキュール・ポアロもどきもちょっと登場しただけで終わるわけないし、アウダ姫も何がしかの形でそのうち出てくるよね……? と信じている。私は原作でフォッグ氏とアウダ姫が結ばれる場面が大好きなんだ。頼みます。4巻以降に希望を託す。
そういえばそういえば、7月からはアニメも放送されるそうな。普通にめっちゃ楽しみである。おわり。