本日、1月6日は誕生日である。そう、シャーロック・ホームズの!(諸説あり)
私はシャーロックホームズシリーズが大好きである。シャーロッキアンを名乗れるレベルでは到底ないが、原作は自宅に揃えてあるし、たいして読めないくせに英語版も置いてあるし、パスティーシュにもちょこちょこ手を出している。
自分の記憶では、高校生のときに「そういえばホームズって有名だけど読んだことないかも」と思い立って『シャーロック・ホームズの冒険』を購入したのがしっかりしたホームズ作品との出会いである。順序通り最初に『ボヘミアの醜聞』を読んで「いきなりホームズが他人に出し抜かれてる」と面食らったのはいい思い出だ。
がしかし、親に聞いたらホームズ作品と私の出会いはそこではないらしい。
どうやら私はチビの頃に「犬のホームズ」が大好きでしょっちゅう観ており、「あいるびー」と連呼していたらしい。あいるびーって何? アイルビーって名前のヒロインでもいたのか?
そう思い続けて早数年、「犬のホームズ」こと劇場版『名探偵ホームズ』がYoutubeで期間限定配信されていた。(1/6まで配信らしいのでギリギリではあるがリンクは貼っておく)
『青い紅玉』『海底の財宝』『ミセス・ハドソン人質事件』『ドーバー海峡の大空中戦!』が配信されている。というわけで各話感想。
『青い紅玉』
「紅玉」と書いて「ルビー」と読む。ここで私が幼少期に言ってた「あいるびー」って『青い紅玉』のことか! と合点がいく。
ホームズ原作にも同じタイトルの話はあるが、青い紅玉という希少性の高い宝石が出てくる以外はまるっきり別の話。今回はモリアーティ教授一味が盗んだ宝石がさらにスリの子供(少年っぽく見えるが実は少女)に盗られ……という展開。
ホームズが普通にいい人でびっくりした。子供向けフィルターかかるとそうなるのか。児童文学のホームズとかもやっぱりヴィクトリア女王のイニシャルの形に壁撃ち抜いたりしないのかな。とはいえニオイが強烈な実験(今回はアンモニアから香水を作るらしい)をされたらワトソンはたまったものじゃないだろうが。
そしてモリアーティ教授ではなく「モロアッチ教授」、シャーロック・ホームズではなく「シャーベック」ホームズと名乗っているところに大人の事情を垣間見た気がする。
『海底の財宝』
イギリス海軍のえらい人とモリアーティ教授の狙う財宝の持ち主(ライサンダー大佐)が双子というノックスの十戒なんじゃらほいな話。
モリアーティ(モロアッチ)教授一味の空気感になんか既視感あるなと思ったら『ヤッターマン』のドロンボー一味に似ている気がする。このわちゃわちゃ感が愛せる。ホームズ死亡ほぼ確定な場面で「我が好敵手ホームズ君の霊にこれから花を献ずる」と言い出して黙祷、おっいいヤツ、と思いきや次の瞬間「やった~~~~~~(クソデカボイス)」なのそういうところだぞ~! となった。スマイリーだけ一人ちょっと本気で悲しんでいるのが優しい。しかしホームズは死ななかった。名探偵なので。
『ミセス・ハドソン人質事件』
ハドソンさん最強回その1。文字通りハドソンさんがモリアーティ教授一味に誘拐される話である。ハドソンさんが19歳未亡人という設定に衝撃を受けた。私より若くして未亡人だなんて……。
誘拐されるものの、その圧倒的な家庭力やら包容力やらで教授一味を圧倒するハドソンさんが強すぎる。ハドソンさんが提供するおもてなしやらお料理やらなんやらが人生初の体験で大困惑のモリアーティ教授。かわいい。
一方でハドソンさんの身柄と交換にモナリザもどきを盗むことを要求されるホームズ。
当然スコットランド・ヤードも(モリアーティ教授の謀略で)ホームズがモナリザを盗むかもしれないことは聞きつけており、夜間も221Bをずっと見張る。窓辺には座っているホームズと、歩き回るワトソンの影がある。
観ながら「これ原作の『空き家の冒険』と同じトリック(蝋人形を窓辺においてホームズがいるように見せかける)なのでは?」と思ったら、アニメの刑事も「まさか……」と走り出し「な、何事です!」「原作を読んでないのか!」。原作を読んでないのかというツッコミが存在していい世界線なんだ。
結局ホームズの方が上手で、うまくスコットランド・ヤードの協力を取り付け、お魚さんが泳いでるような浅瀬の川から壮絶なカーチェイス……馬車チェイス? が始まり、あっという間にモリアーティ教授一味は劣勢に。
ラストでハドソンさんに「もっと早くにお会いしていたら私の人生も変わっていたでしょうが……」と言う教授まだ改心の余地はありそう、いやないのか? あっさり開放してくれるのがぐうジェントルマンである。
『ドーバー海峡の大空中戦!』
ハドソンさん最強回その2。英仏で飛行機を使った郵便ルートが作られたのだが、なぜか事故続き。当然裏にはモリアーティ教授一味が居る。
そしてハドソンさんの過去がちょっと明かされる。ファーストネームはマリーというらしい。そして飛行機乗りたちのマドンナだったというハドソンさん、只者じゃなさすぎるのだが。不時着? 墜落? した飛行機に斧を持って駆け寄るハドソンさんがかっこよい。
なんといっても最大の見せ場は終盤である。ニトログリセリン(少しの振動で爆発する薬品らしい)を載せた郵便機とモリアーティ教授一味の飛行機が空中ですったもんだをしている。教授が鉤縄を郵便機の胴体に引っ掛けて墜落させようとしており、それを車でかっ飛ばして追いかけるハドソンさん。危うくガス欠、というタイミングで並走してきた飛行機乗りおじさんに「伯爵様、マリー一生のお願い! その車貸してくださらない?」と声をかけるハドソンさん。そんなん貸すしかないでしょ。伯爵の車に飛び移ったハドソンさんはさらにスピードを上げていき、ワトソンから拳銃を借りて、見事に郵便機を捕らえている鉤縄を撃ち抜く。どういうこと? 次元大介あたりと射撃の腕比べしてもらってもいい?
ハドソンさん、ジブリヒロインの要素が凝縮されている感じである。包容力があって家庭力もあって射撃がうまいみんなのマドンナ。あと拳銃の描き方とかに宮崎駿の圧倒的自我を感じた。
正直、私が幼い頃に『名探偵ホームズ』を観ていた当時の記憶はほぼ無いのだが、いざ大人になってから観てみても面白かった。それに、記憶に明確に残っていなくても別ルートでホームズが好きになったのは、ただの偶然ではないのかもしれない。三つ子の魂なんとやら、というやつだろうか。
ついでにTVシリーズ版の第1話も貼っておこうと思う。こちらは配信終了などは当面ないはず。
そして最後に、ホームズお誕生日おめでとう! 今日は『恐怖の谷』でも読もうと思います。おわり。