郵便配達はベルを鳴らさない

平均よりちょっとだけ多めに映画を観る人間の雑記

映画

アラン・ドロン追悼特集で観た作品たち② 『太陽がいっぱい』感想

アラン・ドロン追悼特集で観たものシリーズ②はこちら。 www.youtube.com そう、アラン・ドロンの原点にして傑作、『太陽がいっぱい』だ。 美しくも屈折した青年トム・リプリーは、大富豪の友人を殺害しなりすましを計る。まばゆい太陽が照りつける南イタリア…

アラン・ドロン追悼特集で観た作品たち①

アラン・ドロン追悼特集で観た作品について書いていく。ネタバレは当然のごとくあります。 今回書くのは『さらば友よ』『生きる歓び』『ビッグ・ガン』。 さらば友よ アルジェリアから帰還した軍医のバランは広告会社の女から、横領した債券を会社の金庫に戻…

無限は弾きこなせない『海の上のピアニスト』感想

『午前十時の映画祭』なる映画特集がある。 1年単位でラインナップを組み、古今東西の映画を上映してくれるという極めてありがたい特集である。ちなみに2024年度の公式サイトはこちら。 asa10.eiga.com 私の父親も(世間の平均と比べたら)映画が好きなので、…

早川雪洲初主演作『颱風』を観た ―国立映画アーカイブ

国立映画アーカイブ(NFAJ)にはだいぶお世話になっている。去年は東宝映画特集で『新しき土』の伊丹版を鑑賞して「うわファンク版と違う!」と盛り上がったし、『ゴジラ』で芹沢大助こと平田昭彦のカッコよさに気づいてしまった。 そんな中、NFAJにはいつもだ…

神戸映画資料館で早川雪洲作品を観てきた

" data-en-clipboard="true"> 神戸映画資料館で早川雪洲の出演作を3本観てきた。ブログのタイトルそのまますぎる。 " data-en-clipboard="true"> 次回プログラム②【国立映画アーカイブ所蔵 外国無声映画傑作選 vol.3】9月16日(土)13:30〜鶴子と雪洲 知ら…

人と時の移ろいやすさ 『さらば、我が愛/覇王別姫』感想

昔、大学で演劇分野の講義を取っていた。かといってそんなにガチガチに難しいものでもなく、入門編のような気楽なものだった。教授の軽妙な喋りと、豊富な映像資料をもとに、昔は雅楽や神事から現代はミュージカルまで幅広く取り扱う講義だった。 さて、そこ…

正気を犠牲にしたオデュッセウス 『ナチスに仕掛けたチェスゲーム』感想

ちょうど一年前の今頃、私はオリバー・マスッチなる俳優に熱を上げていた。詳細は以下である。 tochterdeskino.hatenablog.com さて、このときに私はオタクの嗜みとして彼のInstagramの投稿を片っ端からチェックしたのだが、なんだか面白そうな主演作を見か…

最近観たもの『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』『ラストエンペラー』

近頃バタバタしていたのでとても久しぶりの更新になってしまった。社会人って本当に時間がない。働きながら趣味やその他生活を充実させている方々を尊敬するばかりである。 近頃観たものについてつらつら書く。 『エブリシング・エブリウェア・オール・アッ…

ハリウッド、永遠の狂騒 『バビロン』感想

「セッシュウ・ハヤカワとその美しい妻ツル・アオキが住む素晴らしき城のような邸宅は、ハリウッドの映画村が地元紙の描写したような官能的なバビロンではないという事実を突きつけた」*1 『Night Life in Hollywood』(1922)の字幕のひとつである。 youtu.be…

私はまだ仮縫いが終わったばかり 『華麗なる闘い』感想

最近私が熱を上げている平田昭彦が出ていると知ったので観た。(ものすごく簡潔な成り行き)ソフト化されていない映画らしく(おかげで貼れそうな画像もちょうどよい紹介動画もない)、東宝~~~ソフト化するか東宝名画座で配信して~~~~~~ 清家隆子は、戸…

クロスオーバーってたいへんだ 『リーグ・オブ・レジェンド 時空を超えた戦い』感想

私はクロスオーバーという概念が大好きである。自分の好きな作品のキャラクター同士が同じ世界線に居るなんて一度で二度おいしい。一石二鳥。もう最高。ついでに言うと自分でクロスオーバーを空想するのも大好きである(最近思ったんだけど、初代ゴジラの芹沢…

60年代の光と闇『ラストナイト・イン・ソーホー』感想

あけましておめでとうございます。 今年の映画一発目は『ラストナイト・イン・ソーホー』だった。 Netflixで『クイーンズ・ギャンビット』を観て「主人公のエリザベスが素敵~!」と騒いでいたら、「その俳優(アニャ・テイラー=ジョイ)、私がこの前観た映画…

ファンタビ3でネームドモブに落ちた話

※普通にネタバレがある 公開から数ヶ月が経つが、『ファンタスティックビースト』の最新作を観に行った。 作らせた残りのトランクどこ行った? とか 国際魔法使い連盟のリーダー選出って選挙じゃなくて麒麟のお辞儀なの? とか 神秘的な儀式ぜんぶ東洋でやれ…

変しい変しい私の変人 『青い山脈』感想

私が『青い山脈』なる映画を知ったのは10年ほど前のことである。 某携帯電話会社のCMで自転車を漕ぎながら、タレントと白い犬がメロディを楽しげな口ずさんでいる。それがなんの曲か考えることもしなかったが、当時まごうことなきおチビであった私はそのメロ…

新しき土とサムライの娘 『新しき土』日独版比較

『新しき土』(Die Tochter des Samurai/侍の娘)という映画がある。 ja.wikipedia.org ざっくりとしたストーリーを以下にまとめた。 輝雄(小杉勇)はドイツに留学したことをきっかけに日本の家族制度を始めとする慣習に反感を覚えるようになる。帰国途上の船で…