郵便配達はベルを鳴らさない

平均よりちょっとだけ多めに映画を観る人間の雑記

アメリカはいい国です 『ゴッドファーザー』はいい映画です

「『ゴッドファーザー』がいい映画なんて常識だろ」と言われそうなタイトルになった。私が映画を好きになったきっかけの話でも書こうと思います。

他の記事でも少し書いたが、私は幼少期から映画大好き人間だったわけではない。ハリー・ポッタージブリ映画を観るくらいだった。大きな音が苦手だったので、映画館にもあまりいかなかった。

「映画、嫌いではないが別に好きでもない」といった調子で成長していったが、転機が訪れたのは中学生の時である。
父が居間でお気に入りのDVDを再生し始めるところだった。父は映画が好きで、高校時代には映画製作部をやっていたらしい。家にもDVDのコレクションがいくらかあった(当時は「ようわからん昔の映画だな~」と思っていたが、今となると「あ~、イーストウッド好きなのね」という感じである)。たまたまその場に居合わせたので、冒頭くらいちょっと観てみるか、と父の横に座った。それが『ゴッドファーザー』だった。

※以下、ネタバレあります

中学生に『ゴッドファーザー』はいささか強烈だった。馬の生首! 蜂の巣! 車ごと爆発! という強烈な場面の数々もさることながら、登場人物が多すぎて整理が追いつかない。えっ、この太った人さっき死んでなかった? なんで生きてるの? このカジノの経営者は敵ファミリーのドンとは別? 主人公の妹ちゃん殴ってるの誰だっけ?*1 もうしっちゃかめっちゃかである。
人物がわかっていないので、「あいつは○○と言ったが、本当は○○に違いない」という本音と建前も何もわからない。当然のことながら、誰が裏切っていてどのファミリーと結託していたのかという話の筋もよく理解できない。「ようわからんけどマフィアの抗争があって裏切り者と敵対者を全員殺してスクールボーイが後を継いだ」という認識に落ち着いた。

よくわからなかったし、難しかったのも確かなのだが、それ以上に「1回観て理解できない映画がこの世に存在するんだ」ということに衝撃を受けた。それまでに触れてきた映画と明らかに作られ方が違うなと思った(こういうジャンルの映画に触れてこなかったので当然と言えば当然だが)。
1回じゃ理解できなかったけど、何度か観たらなにか変わるかもしれないと思ってちょこちょこ円盤を再生した。次第に登場人物の顔と名前が一致し、誰がどういう動き方をしていたのかを理解し始めた。映画を繰り返し何度も観る感覚がよく理解できていなかったけど、見返すと映画って1作品にこんなに情報量があるんだな。すげー。
映画っておもしろいのかもしれない……。

以降、高校生になったらTSUTAYAに通うようになったり、大学生になったらサイレント映画のスターに騒いだり、元気にマイペースに映画を観続けている。

ちなみに先日『ゴッドファーザーPart2』を映画館で観る機会があり、久々にPart2を鑑賞したのだが、主人公の兄が主人公へのコンプレックスが原因でファミリーを裏切る結果になってしまったのを観て「気持ちわかるなあ」と思った。Part2を観るときはだいたい「1920年代付近と1950年代付近を行き来する構成、主人公と父親の対比が際立ってめっちゃいいな」とか「コニーはどうしてこんなに男運無いん?」とか「最後の誕生日の場面で今までに死んじゃった人たちみんな元気で逆に辛い」「マイケルが入隊することへの反応、兄弟で反応違って面白い」あたりの感想を反復横とびしていたのだが、時間が経つとまた抱く感想も変わってくるんだなあと思う。

いろんな映画も観つつ、『ゴッドファーザー』はこれからも大事に観ていきたいなと思っている。というかいろんな人の「運命の作品」的な話を知りたいなあ。

余談
・ビトがコルレオーネ村から来た、ということで入国検査時にそれがファミリーネームだと勘違いされたなら葬儀屋のボナセーラは挨拶したら(ボナセーラは「こんばんは」らしい)それが勘違いされたんだろうか……。

・我が家にはPart3だけディスクがなく、父親に理由を聞いたら「アル・パチーノがシワシワだから」らしい。今度私が買おうと思う。

・ちなみにトム・ヘイゲンが一番好きです。Part3は当初マイケルとトムの確執を描く予定だったと知ったときはそっちバージョンも観た過ぎて大暴れした。

・今年の大河ドラマは『ゴッドファーザー』をイメージして書いているらいしいですけど、最近のしぬどんどんっぷりを観ていると、Part2の「世の中に確かなことが一つだけある。人は殺せるということだ」という台詞を思い出してしまう。

*1:ルカとクレメンザをごっちゃにしているし、モー・グリーンとソロッツォも混ざってるし、カルロの存在を忘れている